毎度お騒がせしちゃいます。




「お兄ちゃん!!助けて―――――!!!」
バァーンッと勢いよく玄関の扉が開けられたのは、ハイネルとグーデリアンが2人仲良く朝食をとっていたその時だった。
溺愛する妹の泣き叫ぶような声に、2人は一体何なんだ!?と玄関へ急ぐ。
「おんぎゃ――――っっっっ!!!!」
割れんばかりの泣き声の主を抱き抱え、リサ・ハイネルはうっすらと涙を浮かべて立っていた。
「リサ!一体どうしたんだ!?その赤ん坊は?」
「今日1日ケイトから預かったのよぉ。よく眠る手の掛からない子だから、少しの間見て欲しいって……。でもちっとも眠ってくれないし、ずっと泣いてるし…もうどうして良いかわかんなくて」
堪えきれずにヒックヒックと涙を流しながら、お兄ちゃん達だけが頼りなの……と言う殊勝な妹に、ハイネルは、友達といえどそんな赤ん坊を預かるなんて、と怒るどころか感動していた。
「そうか、リサ。よく分かった。私に任せるんだ」
「ええっ!?」
ヒーローの決まり文句のような台詞とともに何故か満足げに頷くハイネルに、グーデリアンは一抹の不安を覗かせる。
「おいおい、いくらお前でもそれは無理だろぉ〜?」
「何を言う!!私はお前と違って、幼い頃からリサの面倒を………」
「おんぎゃ――――――っっっっっっっ!!!!」
さすがにこの爆音の中ではケンカすら出来ない。
そんな言い合いをする前にとりあえず泣き止ませないと、とハイネルがリサの前に歩み寄ると、ふわりと慣れた手つきで赤ん坊を抱き上げる。
「ほら もう大丈夫、大丈夫……」
そう赤ん坊をあやしながら、その小さな背中をポンポンとたたくと、次第に安心したのか、ハイネルの首元に頭を寄せ、スヤスヤと寝息を立て始めた。
「「……………………………………………」」
何故か耳まで朱く染め、突っ立ているグーデリアンとリサ。
「お兄ちゃんって……」
「ああ……」
どうやら意見の一致した2人は互いに目を合わせ頷いていた。
「「やっぱ何しててもエロい……」」
「――――――はぁ!!??」
赤ん坊に向けられていた優しく柔らかい笑顔は一瞬のうちに消え去り、自分が聞き間違えたのでは、とばかりに見開いた瞳をグーデリアンとリサに向ける。
「だってさぁ、お兄ちゃんの行動や仕草や視線を見てるとつい想像(妄想)を掻き立てられちゃうのよね〜」
「そうそう」
「なんてゆーか、色気があるっていうのかしら」
「そうそう!」
「意外性…とも言うかしら?男の人なのにすごく綺麗だったり、頭はいいのに天然だったり……」
「そうそう!!」
「とにかく、何しててもやたらエロいのよね」
「そぉ―――なんだよぉ―――」
「今だって………」
「もういい!!!!!!!!!」
マシンガンのような速さでまくし立てる妹と、示し合わせたような合いの手をいれるグーデリアンに呆気を取られているうちに、何だかとんでもない方向に自分の事を形容されてようやく我に返ったハイネルが、 静止の声を上げた瞬間
「おんぎゃ――――――――っっっっっっっ!!!!!!」
怒りの気配を感じ取ったのか、再び火がついたように腕の中で暴れだす。
やはり、鼓膜を破り裂かれるような泣き声を前にしては、怒鳴ることすら出来ない。
チッと軽く舌打ちすると、リサの持っていた赤ん坊用の荷物を取り上げた
「お前達……後でよぉ〜〜く話すことがあるから、リビングで待っているように……」
怒りを含めた地の底を這うようなハイネルの声を残し、ハイネルはそのまま自室へと消えていった。



―――――だって本当のことなのにィ……
アヒルのように唇を突き出し、悪びれた様子も無くむくれてリビングへと向かうリサ。

―――――子守りしてるハイネルも可愛かったなぁ〜。これが俺とハイネルの子供だったら……
むふふ、と更にハイネルを激怒させる程のニヤけた顔をして、リサの後に続くグーデリアン。



その数時間後、赤ん坊の母親であり、リサの友人でもあるケイトが見たものは、自分の子供のオムツを手際よく変えながら、静かに…いや、怒りを押し殺して説教しているハイネルと、 正座して ごめんなさい と半泣きになっているリサとグーデリアンの姿であった。






END



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