雨のち晴れ (2)




ホテルへと持って帰ってきたはずの書類は、詰め込まれたカバンから出てくることはなく、電源すら入っていないパソコンをぼんやりと見つめたまま、ただ座っていた。
眠らなければ、と思えば思う程に耳へと纏わり着く雨の音が、ハイネルをベッドへと向かわせる気力を奪っているかのようだった。
机の上に置かれた時計に目をやると、針はすでに明け方の時刻を差している。

―――――…一体、私は何をしているんだ……。

こなさなければならない仕事にも手を付けず、かと言って疲労の溜まった身体を休ませるわけでもなく。
グーデリアンの放った気まぐれな一言の為だけに、こんなに気持ちが掻き乱されるなんて―――。
たった一言、拒絶の言葉を返せば済むハズだったのに。
それを許さないグーデリアンの、いつにない真摯な顔が、声が。
己の心を混乱させる。
「――――らしくないな」
溜息交じりの声と共に真っ白な天井を仰ぐと、ポウ、と灯ったスポットライトが、まだ薄暗い室内の中で月のように輝いている。
柔らかく自分を照らしてくれるそれは、まるでほつれた己の心を正してくれるかのようだ。


好きだ、なんて。
真意の解らない、グーデリアンの言葉。
――――イツモ、チャカシテバカリだったジャナイカ

好きだ、なんて。
追い込まれたような、真剣なまなざし。
――――ソンナカオ、ミタコト、ない

好きだ、なんて。
――――拒絶できない自分

好きだ、なんて
受け入れられないのは。
信じて、なんて
受け入れられないのは。
傷つく自分が、怖いから。
傷ついてないフリなんて、出来ない程
自分が惹かれているのが、わかるから――――。
大きな青い空に恋焦がれているのは、自分のほう


この雨が止んだら
私の空を、見つけに行こう。
たとえアイツの言葉が、嘘だったとしても、
私の空は、たった一つなのだと。
たとえ傷ついたとしても、

雨は必ず、上がるから。



END



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