星降る夜は




「ハイネル!星見に行こうぜっ、星!!
息せき切ってオフィスへと入ってくるグーデリアンに、ハイネルは憮然とした表情で固まっていた。
「な〜ぁ!!行こうぜ〜〜〜」
こうしたい、と決めたら実行出来るまで騒ぎ続けるグーデリアンは、もはや駄々っ子同然だった。
「……今、仕事中なのだが邪魔するのなら出て行ってくれないか」
本当なら怒鳴り上げたいところを、グッと堪える。いつも感情のままに爆発して、結局無駄な時間を過ごしてしまっていることを毎度後悔しているからである。
「邪魔する気なんかねーよ。仕事が終わって、一緒に帰る途中で少しハイネルと星が見れればいいんだって」
珍しく殊勝なことを言ってのけるグーデリアンだったが、星を見つめるロマンチックな2人の夜を想像してか、その鼻の下は伸びきっていた。


――――――ほら、ハイネル。今日は沢山の星が出て綺麗だぜ
なんて言いながらハイネルを見つめる俺
――――――確かに綺麗だな。
星を見上げながら微笑むハイネル
――――――でも、この星を全部集めて輝かせても、お前の方がずっと綺麗だよ
白いハイネルの頬が朱にそまり、俺を見つめる。そして少し照れたように俺の名前を呟くんだ
――――――グーデリアン……
――――――ハイネル……
そして2人は、どちらともなく唇を重ね合わせるのだった。 (完)

完璧だ!!!!
グーデリアンの頭の中は、すでに星々によって祝福されているようである。
1人にやけ続けているグーデリアンをよそに、既にハイネルの視線は手元の書類へと注がれていた。
「…で、お前はここで私の仕事が終わるのを待つつもりなのか?」
「当ったり前じゃん。だから、ホラ」
持っていた袋をハイネルに見せつけるかのように、ぐいっと前へ突き出す
「いつまで掛かるかわかんねーから、ヒマ潰しにと思って」
デスクのイスに座り、訝しげに見ていたハイネルの位置からでも、グーデリアンの持っているそれは大量のお菓子だということが分かった。
見る見る内にハイネルの眉間には皺が寄せられ、とうとう声を張り上げてしまう。
「貴様っ!もしかして、そのスナック菓子を食べながら待つつもりなのかっ!?」
ウエイトコントロールが何よりも大切なレーサーにとって、グーデリアンの持っているそれらは毒にしかならない。
しかも、ヒマを潰す為だけに食べられたのでは話にならない。
「そのつもりがなきゃ持って来るわけねぇじゃん。ほら、早く終わらせないとどんどん食っちまうぜ〜」
どうやら確信犯のようである。
どっかりとデスク前にある来客用ソファーに座り込むと、袋からお菓子を次々と取り出していった。
「あー もう!!分かった!もう終わるからその袋を開けるんじゃないっっ」
ハイネルは怒りで震える手を必死で押さえてイスから立ち上がり、デスク上に散らばっていた書類を見渡す。
今日中に見ておきたい書類も何枚かはあったが、それらを明日に回す労力と、グーデリアンが食べたお菓子の分だけトレーニングを課さなければならない労力を比べると、 前者の方が幾分かはましだと思ったのだ。
グーデリアンの策にハマってしまったのは不覚だけれど、元々星を観察するのは好きだったハイネルは仕方が無いとばかりに大きく溜息を付いて、パソコンの電源を落とした。








「ほら、ハイネル。今日は星が沢山出……」
「うるさいっっっ!!今集中して見ているのだから声を掛けるんじゃない!!!」
何事にも勤勉なハイネルに、ただ星を見るだけ、なんて出来るはずもなく。
「でも星なんかよりも、お前のほうが綺麗…」
「星なんかとは何だ!!!お前はこの星空の素晴らしさが全く解ってないっ」
しつこく食い下がるグーデリアンに、その後数時間にわたる星についての講義が成されたことは言う間でもなかった……。ご愁傷様。




END



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